熊倉製作所 社長ブログ 新潟県田上町、熊倉製作所社長”くまかつ”のブログ

素材選び

素材についてはこれまでステンレスについては何度か書いてきましたが、今回は素材選びについて、広い捉え方で紹介していきたいと思います。
最も身近な金属といえば鉄ですが、他にもアルミニウム、ステンレス、チタンなど様々な金属があり、さらには複数の金属を混合させた「合金」があります。
先ほど例に挙げたステンレスも合金の一種であり、鉄とクロムから成り立ち、種類によってはニッケルなども入っています。
金属は種類によって単価が全く異なります。
主な金属の単価を安い順に並べると以下のようになります。

 鉄 < ステンレス < アルミニウム < 銅 < チタン

さらにその上には、金、銀、プラチナなどのいわゆる「貴金属」があります。
どの素材を選ぶにしても、なぜそのような素材を選ぶのか。
つまるところ、その素材の「特性」と「価格」のバランスになります。
そもそも
「なぜ金属なのか?プラスチックではだめなのか?木ではだめなのか?」
ということも考えられます。
金属を選ぶ理由としては、主に強度が挙げられますが、今回はそこには踏み込みません。
金属を使用することを前提として、その先なぜ鉄でいいのか?高価でもステンレスを選ぶのか?という点を見ていきます。

再度述べますが、素材選びは「特性」と「価格」のバランスになります。
また「特性」は、製品として使われる際の特性と、その製品に加工する際の特性の2つの特性があります。

例としてステンレスを見てみましょう。
特性のひとつとして一般的に知られているよう「錆びにくい」という性質があります。
その性質を活かして、スプーンなどの食器や、キッチンまわりなどに使われています。
ただ安ければいいのであれば鉄を使うところですが「錆びにくい」という特性を求めるために、価格は高くてもステンレスを選択します。

錆びにくいという特性だけを見ればチタンも同じなのですが、チタンでは非常に高価になってしまいます。
(相場により単価は大きく変化しますが、チタンはステンレスの約10倍)
そこで、なるべく安くて、求める特性を満たすものということでステンレスが選ばれます。

しかし、素材は本当にステンレスでいいのか?
先ほど特性には製品としての特性と、加工にあたっての特性があると述べました。
つまり、錆びにくさという「製品として求める特性」のほか「その形に加工するための特性」も考慮しなければなりません。
もちろん製品として求める特性の方が優先されます。
加工するための特性として例を挙げると「曲げやすい」「曲げにくいが、曲げた後はその形を維持しやすい」「削りやすい」などの特性があります。
熊倉製作所では切削加工をメインとしているため、特に「削りやすさ」を重視することになります。

ステンレスと一口に言っても、基本的には鉄とクロムの合金ですが、その他にニッケルやモリブデンなども添加され、それらの配合具合によってSUS303、SUS304など様々なステンレスが作られています。
ごく一般的なステンレスはSUS303ですが、削りやすさを考えると、よりクロム、ニッケルの比率の高いSUS304を選択することになります。
生産数量が1個2個であればそれほど気にすることがありませんが、量産となると小さな加工効率の差が積み重なり、大きな差となってきます。
整理すると、数ある金属の中から「錆びにくい」という製品に求める特性からステンレスを選び、さらにその中から「削りやすい」という、加工するための特性からSUS304を選んだ。ということです。

いちおう、ひとつの資料になればと今回紹介した各金属の特性を一覧にしておきます。
ただし、金属メーカーによって配合を工夫し、新たな特性を作り出している素材もあるので、ここでの記述と異なる場合もありますが、一般的な特性として見てください。

主な金属素材の特性、用途
素材 特性(特に鉄と比較して) 主な用途 比重
(水=1)
ステンレス 熱に強い。薬品に強い。錆びにくい。加工しにくい 調理器具、厨房器具 7.7~7.9
アルミニウム 軽い。強い。磁気を帯びない。錆びにくい。熱伝導率が高い。加工しやすい 航空機、建材、自動車 2.72
熱伝導性が高い。電気伝導性が高い。抗菌性がある。やわらかい 電線、電子部品、給水管 8.96
チタン 軽い。強い。錆びにくい。生体適合性が高い(人体にやさしい) 医療、航空機、自動車、化学機器、熱交換器 4.5

※鉄の比重は7.87

さて、最後に余談ですがみなさんも玩具の「超合金」という言葉を耳にしたことがあると思います。
そうです。「超合金ロボ」なんかのアレです。
スゴい合金どころか、金属性というわけでもなく、樹脂でできています。
「超合金」は素材ではなく某玩具メーカーの「商品名」です。
でも、仕事として金属に関わる人にとっては、「超合金」はなんだか心をくすぐる言葉ですよね。

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