これまでの記事の中でも、ステンレスは基本的に切削加工がしにくいが、数あるステンレスの種類の中には切削加工のしやすい「快削材」あるいは「快削鋼」なるものも存在すると書いてきました。
今回はそのステンレスの快削材について見てみましょう。
「快削」とはその字のごとく切削しやすいということですが、もう少しミクロ的に快削を考えると、
・切削そのものがしやすく
・切削くずが剥がれ落ちやすく
・剥がれた切削くずが刃物にくっつきにくい
ということになります。
これらを実現するためにSUS304などのステンレス鋼に対して成分を調整し、快削ステンレス鋼がつくられます。
(「切削くずが刃物にくっつきにくい」はどちらか言うと刃物側の話ですが)
例えば、SUS303は快削ステンレス鋼と呼ばれるもののひとつです。
切削しやすいということは、精度を出しやすいということでもあり、精密機械部品によく使用されます。
SUS303は最もメジャーなステンレスのSUS304とは規格の数字が1つ違うだけのようですが、何が違うのでしょうか。
SUS304は主成分はもちろん鉄で、クロム18%、ニッケル8%が含まれていますが、SUS303はこれに、モリブデン(Mo)が添加されます。
ただし、ここまではあくまでJIS規格としての話で、各ステンレス鋼材メーカーはさらにSe、Te、S、Cu、Pbなどを添加して、いろいろな快削材を提供しています。
ここではSUS303を例にとりましたが、同様にステンレス快削材はSUS430をベースとしたSUS430Fなどもあります。
JIS規格 | 主な成分 |
---|---|
SUS303 | Cr(17~19%)、Ni(8~10%)、Mo(≦0.6%) |
SUS304 | Cr(18~20%)、Ni(8~10.5%) |
SUS430 | Cr(16~18%) |
SUS430F | Cr(16~18%)、Mo(≦0.6%)、S(≧0.15%) |
ここで添加される快削成分は、従来より鉛が使われることが多かったのですが、なるべく鉛以外のものを使用する鉛フリーの流れにあります。
鉛フリーの流れははんだなど、ステンレスに限ったことではありませんが、実はステンレスの快削材づくりにも大きく関係のある話なのです。
このわずかな快削成分が、切削加工能率を倍にもします。もちろん、普通のステンレス鋼材よりも高価ですが。
以前にも書いたように、刃物もステンレスに合わせたものを選ぶ必要があると書きましたが、素材もわずかな成分の違いで切削加工のしやすさに大きく差が出てくるのです。
また今後もステンレスの切削加工について書いていきたいと思います。
最近のコメント